戸田整形外科リウマチ科クリニック

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親権不適合の親による虐待には里親が良いが、傷ついた心は治りにくいこともある

元厚生労働大臣の塩崎恭久(やすひさ)さんが政界引退を機に、里親の登録をされたそうです。りっぱなことだと思います。さて、岡山5歳児虐待死事件も神奈川・大和市小1児童死亡事件も「児童相談所はなぜ、不適切な親に子供を返したのか?」、「里親を探せば良かったのでは?」と考えられる方がいるかも知れませんが、里親制度の活用もむつかしいようです。 山本先生の解説によると毎年4万~5万人の子ども(世帯数でいうと約4万家庭)が虐待を含む保護者の不適切養育問題で児童相談所の関与を受けています。大変忙しいと思います。その中で約1万5,000人が親から引き離されて施設入所しています。20%前後の子どもが元の家庭に帰りますが, その中で4~25%で再び虐待などの問題が起きます。日本では、生みの親としての親権者と子どもの関係を常に軸として考える家族観があるために欧米のように里親制度がなかなか進まないそうです(山本恒雄: 司法精神医学.7:33-40,2012.03) しかし、読売新聞が児童相談所を持つ全国73自治体を調査したところ、2019~20年度に里親へ引き取られた子どもの18%が里親の元を離れたそうです。虐待で傷つき、不安定になる子どもが多いため、里親との良好な人間関係が築きにくいことも一つの原因だと考えられます。松本清張さん原作の砂の器の主人公のように良い里親に引き取られても傷ついた子供の心は治らないこともあるのかもしれません。 論文の解説:江坂の整形外科診療所 戸田整形外科リウマチ科クリニック院長 戸田佳孝