戸田整形外科リウマチ科クリニック

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研究Research

変形性ひざ関節症に対する足首を固定した足底板の効果

リ ウマチと同様に関節が痛くなってくる病気に変形性関節症という病気があります。この病気は軟骨が擦り減って骨と骨とが直接こすれ合い、いわば油ぎれの自転 車になったような状態です。特にこの変形性関節症は膝におこることが多く、東京大学医学部22世紀医療センターの研究では全国に3080万人いるとされています。変形性膝関節症になる とO脚になり、膝の内側が痛くなることが多いのですが、その治療の一つに足底板という靴の中敷きを入れる治療法があります。しかし、安田先生の研究からも 従来の足底板の作用は、踵(かかと)を外側にひねることによって脚の付け根から足の裏までの重心が膝を通る線の位置を変えるだけで、O脚は矯正しないとさ れています。従来の足底板がO脚を矯正しない理由は、足首に固定性がないため、踵における矯正力が膝に伝わらないのではないかと私達は考えました。

そこで、私達は、足首を8の字に固定するサポーターの付いた足底板を変形性膝関節症の患者さんの治療に使ってみることとしました。90人のO脚のある変形性膝関節症患者さんの中で誕生日が奇数日の人にはウルファOA(新型群、46例)を、偶数日の者には靴中敷き型足底板(中敷き型群、44例)を装着してもらいました。レントゲン写真を用いて足 底板装着前後でのO脚の度合いを新型群と中敷き型群で比較したところ、新型群ではO脚が統計学的に有意に矯正されましたが、中敷き型群ではそのような矯正 がありませんでした。また治療効果では、8週間足底板装着後の視覚的疼痛指数は新型群では有意に改善しましたが、中敷き型群では有意な改善はありませんで した。以上の結果より私達は、新型足底板では従来の足底板の効果にO脚を矯正し膝の内側の軟骨への負担を減らす効果が付け加えられるのではないかと考えま した。 この研究で平成15年度日本整形外科学会奨励賞(開業医では史上初)を受賞しました。なお、この足底板は特許品です(米国特許番号:09/823,607)。販売は株式会社竹虎 (フリーダイアル:0120-094-315、ホームページ:http://taketora-web.com/から製品紹介を選んで下さい。)からウルファOA(定価2000円)で発売しています。2004年には米国でも発売予定です。 22   主な論文発表 1.Yoshitaka TodaほかJ Rheumatol Vol28 2705-2710,2001年2.Yoshitaka TodaほかJ Rheumatol Vol29 541-545,2002年 3.Yoshitaka TodaほかArthritis Care&Research Vol47 463-473, 2002年(日本整形外科学会奨励賞受賞論文) 4.戸田佳孝ほか整形外科51巻1603-1607,2000年 5.戸田佳孝ほかリウマチ(日本リウマチ学会誌)20巻150-155,2001年  

痛みを少なく確実に関節内に注射をするための研究

 ①膝に効くという健康食品について 最近、グルコサミンやヒアルロン酸という軟骨の成分を飲めばが膝の痛みに効くという宣伝がテレビなどで流されています。 しかし、これらの物質を口から入れても効果がないとの研究結果があります。なぜならば、軟骨の成分を口から入れても胃や腸で消化されて関節にはほとんど 到達しないからです。その問題点について、私は、朝日新聞平成20年3月30日日曜版beに掲載しました。 image1mod ②ヒアルロン酸関節内注射について やはり、膝の軟骨に栄養を与えるためのヒアルロン酸は注射で関節内に入れた方が効果が高いです。 しかし、注射には痛いという欠点があります。そこで我々は、ヒアルロン酸注射ではどこまで細い針で注射できるかを検索しました。 また、針を細くしたため注射器の内圧が高まるので、注射器もロック付きの注射器に変更しました。 ③ヒアルロン酸を確実に入れる方法 ヒアルロン酸は軟骨の成分ですから粘度の高い液です。このため、関節の外に漏れると、塊になり、痛みの原因になります。 Jones博士らの研究結果では、一般的に行われている外側から打つ関節内注射をした59人の中で39人(67%)しか関節内に確実に入ったことが確認できなかったと報告しています。 この外側から打つ方法は、膝に水が溜まっている時に水を抜くのには都合が良いのですが、注射液を液を入れる方法としては適当であるかどうか疑問です。 また「痛い部分は内側なのに外側からなぜ注射をするのか?」と多くの患者さんが質問します。 そこで我々は膝を30度に屈曲するシャーレを付けながら、足首を引っ張りながら膝の内側に注射を打つ方法を考案し、モデルにした注射法の発案者に敬意を表しWaddell変法と名づけました。 我々の研究結果では、このWaddell変法は特に、軟骨がすり減り骨がゴツゴツした患者さんほど確実に確実に入る確率が高かったです。 一番重症の4度の患者さんでは外側から打つ方法の成功率は5例中3例(60%)でしたが、我々の考案した内側から打つ方法の成功率は7例中7例(100%)でした。 image002 一般的に行われている外側からの注射   image2 我々の考案した内側から打つ方法(Waddell変法)   sinryou1                   文献:Toda Y, Tsukimura N : A comparison of intra-articular hyaluronan injection accuracy rates between three approaches based on radiographic severity of knee osteoarthritis.Osteoarthritis Cartilage. 16 980-985, 2008  

巻くタイプのサポーターの研究

巻くタイプのサポーターには、ひざに水がたまる症状の再発を予防する効果もあります。一度ひざに水がたまると、膨張した関節の袋がシワシワになるため、水を抜いても再びたまりやすくなります。そのため、水を抜いたあとは巻くタイプのサポーターでひざを軽く締めつけておけば、シワシワになった関節の袋が圧迫されて、再び水がたまるのを予防する効果が期待できます。 ホムペ用水を防ぐ私の研究では、ひざに水がたまった変形性ひざ関節症の患者さん四三人に対して、水を抜いたあと、一四人にははくタイプのサポーターを、一五人には巻くタイプのサポーターを装着してもらい、残りの一四人にはサポーターをつけずに一週間過ごしてもらいました。ひざの水を抜く前と、抜いてから一週間後にエコー(超音波診断装置)で水のたまっている部分の断面積を測定したところ、はくタイプのサポーターを装着した人の縮小率は平均一二%、サポーターを装着しなかった人の縮小率は平均二・六%に過ぎませんでした。ところが、巻くタイプのサポーターを装着した人では平均二七・三%も縮小しました。

文献 戸田佳孝,月村規子,槻浩司:膝関節水腫穿刺後の軟性装具固定による水腫再発抑制効果-超音波診断装置による計測-整形外科 62:1064-1068,2011