カービングスキーで小回りが効くようになったが、前十字靱帯損傷が増えた
ダウンヒル、スーパーG、ジャイアントスラローム、アルペンコンバインドなど北京オリンピックでもアルペンスキーはやっぱり「冬季オリンピックの花形種目」ですね。
最近のアルペンスキー競技ではカービングスキーが用いられています。カービングスキーは,スキーエッヂのサイドカーブにより雪面に対して傾けると簡単に曲がる構造をしています。このため切れのある弧の小さなターンが行えるため、スピードを殺さずに無駄のない合理的な回転ができるという利点があります。しかし欠点はアイスバーンで板の後ろが流れて不安定になりやすい点です。
佐藤先生達の調査ではアルペンスキー競技で前十字靱帯を損傷した17例中9例(53%)が、slip-catchというカービングスキーで起り易い動きで靱帯を損傷していました。スリップキャッチの動きをスキー板なしで説明すると、カービングはアイスバーンの時に板の後ろが流れて不安定になりやすい。斜面の下側の足で踏ん張ろうと膝を伸ばす。その反動で斜面下側の膝が伸びてX脚になり、内側に回る。その態勢のまま後ろに転倒すると前十字靱帯が断裂しやすいのです。
つまり、よく滑る板はスリップもしやすく。怪我もしやすい。整形外科医としては安全生に対する改良が進むことを期待しています。
論文の解説:江坂の整形外科診療所 戸田リウマチ科クリニック院長 戸田佳孝
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