変形性膝関節症の前触れは靴底の外側だけでなく内側もすり減ること
ゆりかごは少し力を加えるだけでユラユラをいつまでも揺れていますよね。ヒールがすり減った靴も端が反り返っていますので、歩いて入るときにゆりかごと同じ現象がおこります。小出先生達の研究では踵部分の摩耗の厚さが16.4mmの靴では、浮き上がった踵とゆりかごの反対側であたる爪先に持ち上がる力が働くため歩いている時に足を下に下げる底屈のタイミングが早まることがわかりました(小出彩友美ほか人間工学.52: 249-257,2016.)。つまり、踵のすり減った靴をはいていると足首や膝にも負担がかかると考えられます。
齋藤先生達は、若者39名および高齢者36 名が使用していた靴の摩耗を計測しました(齋藤誠二ほか靴の医学.20: 136-141,2006.)。その結果、高齢者は若者のように外側に偏ったすり減りではなく, 外側の摩耗と同時に内側も摩耗していました。その理由ですが、通常の歩行では踵が地面に着く瞬間に足が外側に開くスクリューホーム運動が起るので靴の外側がすり減りますが、 高齢者は加齢に伴う下肢筋力の低下および関節可動域の縮小により,スクリューホーム運動が弱くなり、すり足歩きになるからです。そして、滑って転倒しやすくなります。高齢者のご家族がいれば、足を高く挙げて歩くように注意してあげて下さい。
僕の研究では、58人の変形性膝関節症患者さんと同年代の44人のひざが痛くない人の靴底を比べてみました。その結果、健康な人でも靴の外側が鋭角に外側がすり減っていました。変形性ひざ関節症患者さんでは、内側もすり減って広範囲にすり減っており、足が上がっていない摺り足になっていると考えました(戸田佳孝,増田研一:片側型内反変形性膝関節症患者の靴底の摩耗特性について.整形外科,印刷中)。だからひざの痛む人は靴の内側がすり減ってくれば、靴を買い換えるべきだと考えます。
論文の解説:江坂の整形外科診療所 戸田整形外科リウマチ科クリニック院長 戸田佳孝
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