日本人が好む湿布の最大処方量が令和4年4月から減ります
令和4年4月の保険改正で健康保険料を使った湿布の無駄使いを減らすために1回に処方できる湿布の最大枚数を70枚から63枚に減らされます。湿布は普通1袋に7枚入っていますので、つまり、最大処方量が10袋から9袋に減らされるということです。これは生活保護などで自己負担0円で処方された湿布を転売した時の利益を減らすためとも考えられます。
国内の調査では、湿布を大目にもらう患者さんは61.2%であり、その内49.7%がその使い道を「家族が必要な時にあげる。」と答えました。つまり、30.4%の患者は自分のためにと偽って家族のために湿布を出してもらっていました(松岡紗代ほか:医療薬学. 38: 592-598,2012)。日本人は湿布が大好きです
欧米では、外用薬は塗り薬が主であり、しかも、あの「ひんやり」とする湿布独特の感覚を生む「メンソール(ハッカ油)」は成分として入っていません。
外用薬を使うなら、私は湿布薬よりも塗り薬をおすすめします。なせなら、かぶれる心配がほとんどないからです。ところが、ある製薬会社がヨーロッパの外用薬を日本に移入したところ、ほとんど売れなかったそうです。その理由は「ひんやりしないから」だったそうです。
なぜ、日本人は湿布の「ひんやり」した感覚を好むのでしょうか。それは日本の湿布薬が、布に酒粕を塗って貼ったのが始まりだからです。酒粕に含まれるアルコールが蒸発するとき、皮膚の熱も一緒に奪っていくので、ひんやりするのです。それとともに、アルコールが皮膚から吸収されて、血行がよくなりポカポカしてきます。アメリカの軍歌「リパブリック賛歌」の替え歌である「権兵衛さんの赤ちゃん」の歌詞にも、「湿布」が出てきます。風邪を引いた赤ちゃんに「あわててしっぷした」のは、血行が良くなって、ポカポカするからでしょう。ひんやりした感覚で効いたきがするのは錯覚です。
論文の解説 江坂の整形外科診療所 戸田リウマチ科クリニック院長 戸田佳孝
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